本稿は【起業後の今 第5話】になります。
起業までの道のり、「第4話」については下記ページをご覧ください。
■鎌倉・湘南エリアでの農泊推進
我々が小規模不動産特定共同事業と並行して進めた新規事業が鎌倉での民泊・農泊事業です。
現在は鎌倉と藤沢で空家をリノベーションした簡易宿泊施設を7か所、自社で運営しています。
鎌倉を選んだのは、観光地としてマーケットに優れているのと、縁あって知り合った地元のプロサーファー・富永忠男氏が一生懸命に取り組んでくださるのでビジネスとして勝算があると踏んだからです。
富永氏はサーフボードの板を削ったり設計したりするサーフボードシェイパーの仕事に携わっており、現在はサーフィンやサップのスクールなども運営しています。
ハワイのニューカレドニア在住時代にはホテル勤務の経験もあって不動産や民泊事業にも興味があったようで、弊社の古民家再生事業に協力してくれることになったのです。
鎌倉での事業はまだ8年弱ですが、現在は年商の30%ほどにまで達しており、今後はさらに事業を伸ばす方向で考えています。
まずは鎌倉に根を生やし、施設を20件くらいまで増やしたい。そのくらいの規模になって初めて、地域貢献につながっていることを実感できるのではないでしょうか。
直近では2024年に、8件目の新しい施設をオープンさせる予定です。
これは他の地域でも横展開できる事業ですので、現時点で北海道に展開を始めています。ただ、この一連の事業の流れや方法を知りたいということであれば、そのアドバイスはさせていただけるかと思います。
我々の鎌倉の事業は、農林水産省の農泊推進対策として交付される「令和元年度農山漁村振興交付金」の採択事業になっています。
また古民家再生宿「琥珀」は、国土交通省の不動産証券化手法を活用したモデル事業形成に向けた支援事業でもあります。
「農泊」と言っても我々が直接、鎌倉で農業をやっているわけではありません。
我々の施設に泊まっていただいたインバウンドも含めた観光客の方々が、鎌倉の農産物や海産物を提供するレストランなどで食事をしたり、鎌倉野菜の生産者が運営する宿泊施設にも足を運んでいただけたらと考えています。
また農泊関連以外にも鎌倉のアクティビティとして、富永氏が運営するサーフィンやSUPを体験もすることも可能です。
鎌倉は人気エリアで地価が高いですが、いずれは我々も鎌倉に農場を持ちたいと思いますね。
当社が中核法人を務める鎌倉農泊協議会は鎌倉のコミュニティを盛り上げるためにこの交付金を活用しています。
今後は小規模不動産特定共同事業で老朽空家再生と、鎌倉エリアでの農泊推進対策をうまくマッチングしているというわけですね。
そう考えると別々の省庁で推進する「地方創生」と「空き家対策」は、方向性としてはリンクしているということも言えると思います。
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■持続可能な取り組みを目指して
鎌倉以外にも、当社が地域活性化企業人を務める北海道鹿追町や、企業版ふるさと納税をしている北海道美瑛町においても小規模不動産特定共同事業を有効活用して空家対策ができるのではないかと、ビジネスパートナーと相談している最中です。
あと、ご縁があって台東区浅草でもコロナで閉じる寸前だった旅館の運営を引き継ぎ現在でも運営しています。アフターコロナ後のインバウンドの回復は顕著で日本が観光立国に向かっているのを肌で感じています。
持続可能の問題というと農家の事業承継は耕作放棄地や食料自給率の観点から大きな問題です。
当社は茨城県の神栖市にソーラーシェアリングという太陽光発電と農業の二毛作をしていますが、何分農業は新規参入ですので圃場の管理がうまくいきません。
地元の農家さんと連携していますが、これがなかなか難しいです。今後はソーラーシェアリングと農泊をコラボさせた新しいビジネスしていきたいのですが前途多難です。
今はまだ、ソーラーシェアリングの設備を購入するのに多額の設備投資が必要です。普及のフェーズには至っていると思いますが、FITがなくなったことの影響は大きいですね。
弊社として最も取り組んでみたいのは、エネルギーも食料も自給自足できる形態の住宅です。例えば最近では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の考え方が少しずつ浸透しています。
これは「高効率な設備システムの導入により省エネで室内環境の質を維持しつつ、再生可能エネルギーによって一次エネルギー消費量の年間収支をゼロにする住宅」のこと。
このZEH住宅を老朽空き家の再生に用いて、さらにその隣にソーラーシェアリングの田畑があれば、エネルギーや食料の自給率に貢献し、持続可能な開発目標にも合致してくため、社会はこうした方向に進んでいくと思います。
日本が観光立国を目指すなかで、こうした取り組みに海外の方が見てさらに訪日してくれるようになれば理想的ですよ。
東京都地方都市の連携が叫ばれる昨今、各地域がどんな文化を残すか、どんな街づくりを目指すかという流れのなかで、農業はもっと注目されていくのは間違いありません。
■中小企業としての危機感から生まれる新事業
このように様々な事業をつなげる構想を練ったり、実際に「空き家対策」と「地方創生」をマッチングした取り組みをしていますが、その根底には新しいことをしなければ大資本を持つ企業に太刀打ちできないという危機感があります。
我々の先行者メリットなど、大資本がその気になったら簡単に追い抜かれてしまします。
だからこそよいビジネスパートナーと繋がって、事業承継型M&Aや資本提携をを組み合わせることで特異性を持った経営をしていかねばならないと考えています。
弊社は、右左とすぐに動ける進めるベンチャーならではの意思決定と行動までの速さが武器です。
大企業は縦横の連携や調整に時間がかかるのでイノベーションの促進で連携を前提として話を聞きたいというお話を沢山いただきます。特に農泊や小規模不動産特定共同事業の分野です。
ただ、一緒にやれるかどうかは別の話でWin-Winの関係を築くためには慎重に進めなければなりません。事業承継がM&Aと同じですね。
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